〜地域の信頼を掴みたい!!地域介入苦闘の経緯(介護保険部長 杉山)〜 長寿会の地域貢献をはじめとする活動がさらに幅を広げて! 〜法人として取り組んできた事業、活動の一部を紹介〜 |
「認知症を早期でくいとめよう!認知症予防教室を増やすために」 〜NPO法人 認知症予防ネット主催 記念シンポジウム 京都 宇治市〜 |
「ソーシャルワークの特性に関する実証的研究」への研究協力 〜文部科学省科学研究事業 共同研究プロジェクト〜 |
当法人は泉南市の六尾地区に施設があります。
平成5年に法人設立してから、住民さんより
「静かな農村部に大きな箱物を立て日当たりが悪くなり、畑の農作物に影響が出るか心配」
「散歩しているが挨拶してほしい」、
「職員のマナーが悪くゴミを川や畑に捨て、通勤時に迷惑を感じる」
等々の声が聞こえてきました。
また時には、法人や職員に直接クレームを言い、当初は決して地域と良好な関係と言えず、
信頼関係が構築できかねていました。
法人設立当初は、組織の土壌造りそして、各種制度への対応の忙しさに追われ、
本来の地域貢献や、地域住民との信頼関係が希薄であり、社会福祉法人としての
役割や使命は果たされていなかったのが現状でした。
今一度原点に戻り、住民さんの様々な想いや意見を聞き、必要に応じ、謝罪と改善をし、
また誤解も解き「住民さんと仲良くなりたい」、「六尾の郷があるから安心や」と言われたい、
その一心で一軒一軒訪問することにしました。
平成15年に法人の理解を得て公的援助を受けずに、独自の地域貢献事業
(介護予防・認知症予防教室『リフレッシュ教室』)を実施することを考えました。
初めは地域の関係者10名(区長、評議員、老人クラブ、民生委員等)の自宅に、
「どうしたら住民さんと良好な関係が出来るか、また何が出来るか」を聞き取りにお邪魔しました。
当初は、関係者の対応も厳しく、話を聞いてくれる人は少なく冷たい反応でした。
毎日毎日繰り返し訪問し、私達の想いを伝え続ける中、老人クラブ会長さんが
「何がしたいんや?出来ることやったら協力したろ!ただこの村は難しいから無理やで」と、
協力してくれる人を頼りにして、集会所での老人クラブの集まりを利用させて頂き、
介護予防教室を毎月開きたいとお願いをしました。
そして3ヶ月を要して地域で説明会を開いたり、誤解のないよう回覧板を廻して頂いたりして、
全世帯を訪問しながら「リフレッシュ教室」の参加呼びかけをしました。
訪問した際には入所催促の営業行為と勘違いされたり、皆様お元気である為、
予防教室は必要ないのではないかとの声もあり、村に入る事を戸惑うこともありました。
しかし、毎日根気よく村に入り続けていった結果、少しづつ顔見知りが増え、
住民さんから声をかけてくれるようになり、反応の変化が見られるようになりました。
月一度、集会所をお借りして「リフレッシュ教室」を開催し、10名前後の高齢者が参加するなか、
介護予防の脳リハビリを中心に啓発、勉強会、実践を行い地域の掘り起こしと巡回を続け、
信頼関係が少しづつ構築できていったと思っています。
ある地区の区長さんが口コミでリフレッシュ教室を聞き、開催のオファーがありました。
説明会を実施し、数日後にその地区にて教室を立ち上げました。
20人が参加して頂き、まだ顔も名前もADLも判らないまま教室をスタートしました。
その中で一番しっかりされている紳士が紹介されました。
65歳と若かったため、関係者かなと思うほどの人でした。
メニューの中で前頭前野の働きを説明し、リズム体操、回想法を取り入れたり、
童謡を歌って懐かしい思い出を感じたり、その歌がすぐ出てくるか、二拍子、三拍子と
動作を覚えリズムがとれるか丁寧に説明した上でリズム体操をしました。
90歳の方でも比較的ゆっくりとするのですが、その紳士は戸惑い、理解できないようでした。
私たちスタッフもそれに気づき、恥をかかせないよう、自尊心を傷つけないよう
フォローをしていました。
そして2日後「僕、できなかったんです。ショックでした」と一本の電話がありました。
すぐに自宅に訪問させてもらいました。
「あっ!やっぱりこの人やったんや。さぞ今までご家族を含めて悩んでおられたんだろう」と
胸が痛みました。
奥さんも「歳のせいかなぁ?と思っていたけど、日常生活でアレッと思うことがあり、
どうしようかと思案していたの、、、、教室に参加し、認知症の話を聞き、
勇気を出して電話しました」と。
そして専門医の受診を勧め、希望された病院にもコンタクトを取り、調整させて頂きました。
「いいきっかけを得ることが出来ました。有難うございました」と言われ事務所に戻りました。
そして、スタッフ全員で、「これよな!こういう事を積み重ねていかないとね!!」と
熱い想いとやりがいを感じた瞬間でした。
高齢者が安心して暮らせる地域づくりをするには、認知症予防教室を開き、
認知症の理解と予防が高齢者にも、そして地域関係者にも必要だと考えました。
勿論行政にも認知症予防を地域に啓発したいと協力を要請し、了解を得ました。
補助金をもらうことに関しては、まずは実績を積み上げる事と助言をもらい、
六尾地区から始め、次に砂川地区小地域ネットワークと連携しながら
リフレッシュ教室を開催し、砂川地区では50名近くの参加者がありました。
その後も教室を増設する中、地域のなかで社会資源として定着し、教室のオファーも
増えました。
しかし残念ながら、平成15年10月より公的援助を受けずに、スタッフ1人で開催するには
限界がありました。
そこで再度行政に要望し、実績を評価して頂き、平成16年4月から介護予防事業として
補助金が付くことになりました。
今では、担当地域全域の民生委員、老人クラブ会長、相談協力委員、地区福祉委員等の
関係者に説明をしながら目的や役割を明確にし、関係者の協力を得て泉南市内
(国道26号線より北側)において19箇所でリフレッシュ教室を開催しています。
参加者は10人前後から多いところでは70人と地区により人数に偏り(多い時には
月に15回の教室開催で、述べ250人の住民さんが参加しています)がありますが、
参加者の反応は日に日によく、表情も明るくなり熱心に参加され意欲が出てきていると感じます。
教室が広げられたのも相談協力員(住民主体)の協力により、担当地区ケア会議の
存在が大きかったと思います。
この会議では、地域の中の様々な問題や困難事例を取り上げ、その中には
認知症の問題も多く、「教室をもっと広めたい。認知症予防は当事者だけでなく、
家族も地域も正しい知識を持ち理解しなければならない」と訴え続けながら
毎月1回定期的に開催させて頂いております。
現在は泉南市高齢障害介護保険課の地域支援事業として評価され、地域包括支援センターが
中心に、相談協力員、民生委員、福祉委員、老人クラブ役員、自治会等の皆様方に
協力して頂いております。
何れはボランティアさんによる自主運営を目指し、一人でも一回でも多くの方に
教室に参加してもらいたいと思っています。
今後の展開として、認知症を地域で支え、教室を通じてまだ掘り起こしができていない
ケースを発掘し、個別援助につなげていきたいと思っています。
最近、新聞、テレビ等で高齢者にまつわる痛ましい事件が多いなか、それを見る度にドキッとします。
「地域がこの家庭を知っていたのだろうか?」と。
介護疲れによる虐待や無理心中、将来を悲観しての自殺、孤独死。
高齢者への虐待、財産を狙う振り込め詐欺、悪質リフォーム、これらの事件の背景には
加齢に伴う認知症等が関係していることが多いです。
ニュースを聞くたびに、「なんとかこの人を掘り起こすことが出来なかったのだろうか?」と
胸が痛みます。
認知症の方を抱える家族の生の声を聞くと、虐待を認めるつもりは勿論ないですが、
ネグレクト、言葉の暴力等の態度をとってしまう家族の立場もわからない事はないと
思うことが何度かありました。
家族だけで支えるのでなく、社会も支えないといけない。
「認知症は予防できる」ということを、皆さんに訴えていき、教室の中で啓発して
掘り起こしていきたい。
そしてその中から出た情報をもとに個別支援を行い、時には困難事例も解決していければ
良いと思います。
教室を通じて、たくさんの相談事があります。
小地域で最寄の集会所ですので、ご近所で参加されている場合が多く、相談があっても
その場で言わず、後日電話を頂き、
「悪いけど、ちょっと来てほしい。ご近所に知られたくないから家の前に車を停めないで。
スーパーの駐車場に停めてきて」
そういう要望に応えながら、日々個別訪問をさせてもらっています。
最後になりましたが、認知症は早期発見早期受診し、本人も家族も自己覚知してもらい、
歳のせいだと諦めず、現実から逃げないでほしいと訴えています。
町全体で認知症の方を支え、安心して暮らせる泉南市をつくりあげたいと思っております。
また、当法人が一丸となり、地域に大きな信頼を築き上げることで、安心で安全な
地域づくりを支援していくことを目標に頑張っていきたいと思います。
平成18年5月20日京都にて、
「スリーA方式」による、認知症予防教室を全国に広げたい!
という趣旨のもと活動しておられる「NPO法人 認知症予防ネット」高林実結樹理事長より法人設立3年目記念シンポジウムに、介護保険部長杉山がシンポジストとして講演依頼があり出席させて頂きました。
社会福祉法人長寿会 六尾の郷では平成15年より法人の協力のもと公的援助を受けず独自の地域貢献事業として「リフレッシュ教室」を地域の5つの集会所等で毎月開催しておりました。
その中平成15年12月に「スリーA方式」を全国に推奨している高林先生と出会い、ご指導していただき「六尾の郷独自のスリーA教室」を確立することが出来、その評判から地域より多くの教室依頼を受け、平成16年には行政からも評価され一般高齢者施策として予算がつきました。
この実績が行政だけでなく、認知症予防ネットの高村代表からも賛同され、今回シンポジストとして声がかかりました。
現在では泉南市地域包括支援センターの事業として19箇所、年間1,200人の高齢者が参加され、教室を通じて相談協力委員、民生委員、地区福祉委員、老人クラブ、自治会等に協力要請し地域の掘り起こしを行い「一人で抱え込まないでください。困ったら気軽に相談して」と啓発しています。
京都の講演の中でシンポジストとして皆さんに伝えたかった事。
認知症は・・・・
■ 当事者だけの問題ではなく、家族全員また地域社会の理解と見守りが必要であると少しでも早期で発見すれば引き戻すことも可能であること。
■ 明るく、楽しい認知症予防教室を多く展開することで、多くの参加者に認知症の正しい理解と啓発をすること。
シンポジウムは2時間にわたり5名のパネラーが報告し、法人からは油田事務長、
包括支援センター職員2名、泉南市高齢障害福祉課 井上課長が駆けつけてくれました。
また、この総会記念シンポジウムには民主党と衆議院議員と洛南タイムス新聞記者も参加し
その関心の高さを感じました。
当日の内容はNPO法人より「認知症を早期でくいとめよう」の冊子を出版し、記録されております。
大阪市立大学大学院 生活科学研究科より研究協力の依頼がありました。
代表研究者である、白澤政和教授の「ソーシャルワークの特性に関する実証的研究―ケアマネジメントとの関連をもとに」をテーマにした文部科学省科学研究事業の共同研究プロジェクトの研究協力者として協力です。
研究テーマ:コミュニティーソシャルワーカーによるネットワーク構築に関する研究
研究協力者:社会福祉法人長寿会 杉山美雪
日 時 :平成21年1月13日(火)14:00〜16:00
場 所 :六尾の郷
内 容 :具体的なネットワーキングプロセスについて
調査者 :大阪市立大学大学院生活科学研究科
博士課程の2名
代 表 :大阪市立大学大学院生活科学研究科
白澤政和教授
インタビューでは、冒頭にCSWとしての活動以前に法人としての「社会貢献」あるいは
「地域貢献」としてネットワークを構築することが出来た経緯を話す。
地域の多種多様の関係者との「顔が見える法人」として、各種地域の会合に参加し
時間をかけて「なじみの顔」となり、法人独自の「リフレッシュ教室」(認知症予防教)を展開した。
その中から、ゴミ屋敷、虐待、悪徳商法、孤独氏等地域における課題の発見や
その課題の解決に向けた取り組みを、職域や機関の枠を超えた協働のシステムを作り上げ
「砂川地区見守りネットワーク」として住民と専門職の役割である「公助」「共助」「自助」を
明確とし安心して暮らせる地域づくりを支援している。
インタビューは2時間にわたり、大学院生の調査員2名が来訪し、行われました。
調査員はCSW事業を行う以前より、法人が積極的に「地域貢献」に取り組んでいる事、
またCSWとしての活動ではなく法人の使命として活動していることに驚き、
法人の姿勢に感銘していました。
また、「長寿会の様に相談窓口が確立され、地域住民のSOSが直接法人に入る仕組みを
構築出来た事はすごいですね」と言って頂きました。
今後も法人職員で地域貢献を正しく理解し、地域に必要とされる法人を目指したいと
思っています。